「雨だね」
「梅雨だな」
「ねぇ、知ってる? 梅雨の雨って酸っぱいんだよ!」
「はぁ? 知らねぇし、舐めねぇもん」
「え? 喉乾いたら飲むでしょ?」
「いやいや、飲まねぇし!」
「え、飲むよ普通!」
「普通飲まねぇし!」
「飲むよ普通!」
「いやいや日本人なら水道から飲めよな!」
「何それ~、人種差別的発言だよ~!」
「いやいや、アフリカじゃねえから雨は飲まねぇし!」
「ほら~、偏見差別だ~!」
「ちげぇし! 雨水なんてこの東京シティで誰が飲むんだよ!」
「沙羅魅が飲むもん!」
「おめぇ以外だよ!」
「父上!」
「その人も例外だし!」
「あと貧乏人!」
「それこそ偏見じゃん!」
「これは当たり前だよ!」
「おめぇの普通は普通じゃねぇんだよ!」
「公ちゃんの普通も普通じゃないじゃん」
「まぁな。普通って言ったら、普通電車ぐらいだもんな!」
「あれね、各駅のやつね!」
「公ちゃん。止まない雨はないんだよ!」
「なんだよそれ。ただの受け売りだろ」
「え~、じゃあなんて言えばいいの?」
「そんなん自分で考えろよな」
「じゃあ、終わらない旅はないっていうのは?」
「それ雨と関係ないじゃん」
「え~、どんなことにも終わりが来るってことを言えばいいんじゃないの?」
「それだったら、開けない夜はないとか盛者必衰とか言っとけばいいだろ」
「あぁ、イタチの最後っ屁的なね!」
「それな!」
「雨で例えるの無理だよ~」
「できるし!」
「え~、どうやって~?」
「例えば、『5642光年先にある惑星ソテカルでは止むことがない雨がいつも降っているが、我々の星地球では必ず朝と夜があり、雨が降ってもいつかは止む』って言えばいいんだぜ!」
「すごい長いけど言えた!」
「だろ!」
「でも長すぎだから省略しようよ」
「だな。『惑星ソテカルの雨は止まないが、地球ではいつか雨が止む』っていうのでいいんじゃね?」
「え~、まだ長い~」
「じゃあ、『惑星ソテカル雨止まないが地球雨止む』はどうだ?」
「長いよ~」
「はぁ? これ以上どうやんだよ!」
「だから、盛者必衰みたいな~」
「そういうことかよ! だったら簡単だし!」
「え、できるの?」
「惑雨地止」
「わ! できた!」
「な! 覚えとけよ!」
「おけ!」
十年後には辞書に載るかも!
『トッピングカップル 5642』