「いい公ちゃん? 雑草という草はないんだよ」
「なんだよそれ。また受け売りかよ」
「もう~。そうやって話をはぐらかそうとしてもダメだよ~」
「別にはぐらかしてねぇし。おめぇこそ帰り道に雑草食べてたとかいう話を流そうとしてんじゃねぇよ」
「別にそういうつもりじゃないよ。それにあれは校庭のタンポポだったから!」
「おいおい、おめぇ学校のタンポポなんか喰ってんじゃねぇよ」
「昔の話だよ~。今はもう食べてないもん!」
「はいはい。まぁ、小学生ぐらいなら喰うやついるもんな」
「違うもん、中学生だったもん!」
「おめぇ中学生の時にタンポポ喰ってたのかよ!」
「あれかわいい見た目の割に苦いんだよね~」
「別に味が美味かろうがまずかろうが普通は喰わねぇし」
「だって見た目がかわいいじゃん。きっと誰でも食べたくなるよ!」
「ならねぇし! 花はかわいいかもしんねぇけど、雨ざらしだし踏みつけられてるかもしんねぇだろ」
「なにそれ~。人の夢をぶち壊そうとする発言反対~」
「ただの事実だろ」
「違うよ、それは公ちゃんの妄想だよ。虚言だよ」
「可能性の話だし。だから嘘ではねぇし」
「でさ、このシーザーサラダに載ってるこの葉っぱはなんなの?」
「知るかよ。雑草以外だよ」
「だから~、雑草っていう草はないの~」
「またそれかよ。いったいどこ情報だよ?」
「きっと金八先生だよ~」
「確かにぽいな。授業で言ってそうだな」
「だね。腐ったみかんは目をつぶって食べろとか、人という字は何とかってやつとかね♪」
「それはあれだろ、人という字は人が歩いてる姿からできています......」
「え、それ普通じゃん!」
「まだ続きがあんだよ。『いいですかみなさん。人という字は人が歩いてる姿からできています。かの有名な皇帝パスカルはこう言いました。人は考える葦である。つまり葦と足、歩くことで世界を見て回り、見聞を広め、考える力を養い、力強く雑草のように生きてください』ってやつだよ」
「え、金八さん雑草って言ってるじゃん!」
「そりゃ何シーズンもやってれば考え方も変わって来るだろ」
「そうなんだ~。美味しんぼみたいだね~」
「しょせんフィクションだからな」
「で、この葉っぱ何なの?」
「だから知るかよ。今度クッキングパパ読んで勉強しとけ」
「沙羅魅、クッキングパパなら読んでるよ! 全巻持ってるよ!」
「おめぇ100何冊も揃えてんのかよ!」
「当然でしょ! 140巻まで出ててみゆきももう中学生だよ!」
「そこまで知るかよ!」
「もう。それぐらい知っておいてよね~」
「てかおめぇさっき腐ったみかん食べるって言ってなかったか?」
「やだ~。また話をはぐらかす~」
「いやいや、これは重大な問題だろ」
「どこが?」
「腐ったみかんは捨てろよな」
「なんで~、ブッダが青カビは体にいいって言ってたよ」
「それどこのセイントお兄さんだよ?」
「ちがうよ。手塚先生の方だよ」
「は? それもしかして病人に食べさせるペニシリン的なやつじゃね?」
「愛に気づいてください的な?」
「ちげぇし! おめぇ青カビチーズはいいかもしんねぇけど、みかんのカビは安全面に問題ありだろ」
「そんなことないよ。食べても沙羅魅なんともないもん!」
「それはおめぇの胃酸が強力だからだろ!」
「それに兄上だって父上だって平気だよ!」
「それはおめぇん家が強いだけだわ」
「まあね♪」
「今のは褒めてるわけではねぇから。てか、腐ってたらぐちゅぐちゅで美味しくねぇだろ絶対」
「え、なんでぐちゅぐちゅだってわかるの? もしかして公ちゃんも食べたことあるんじゃないの?」
「いやいや、それぐらい食べなくても予想できる範囲だからな」
「もうまた妄想だよ~」
「妄想じゃねぇし。推測だし」
「もう~。公ちゃん食べたこともない腐ったみかんについて熱く語らないでよね!」
「じゃあ、おめぇが詳しく語れよ」
「え~、それは無理」
「なんで?」
「だってあれ思い出したくないぐらいまずいんだもん~」
「なら無理して喰うなよな」
『トッピングカップル429』