「ゴミ捨て場にたまに大金が捨てられることってあるじゃん」
「あっ、だからたまに公ちゃんゴミ漁ってるんだ!」
「おい! 勝手に話を作んな!」
「え、事実無根の事実でしょ!?」
「ちげぇし!」
「違うのかぁ〜」
「おめぇゴミ捨てしたことねぇだろ?」
「あるよ〜、1メートル先のゴミ箱なら3割5分3厘ぐらいの確率で入るよ!」
「ティッシュをゴミ箱に入れる方じゃねぇよ! ゴミ捨て場にゴミ袋を持って行く方だし!」
「なんだそっちか〜。そんなのはお手伝いさんがやることでしょ〜」
「でたよ、お嬢様発言!
「だから何?」
「例えば、右手にゴミ袋、左手に鞄を持ってるとするじゃん」
「うん」
「で、ゴミ捨て場に行く時まではどっちを捨てるか分かってるわけよ」
「うん」
「でもよ。ゴミ捨て場にゴミ袋捨てて少し歩いてると違和感があるわけよ」
「あっ、あれね!」
「おかしいな……、おかしいな……って!」
「そう、ついて来ちゃうやつ!」
「稲川淳二じゃねぇよ!」
「違うのかぁ〜」
「鞄を捨てちゃって、ゴミ袋を持ったままってこと!」
「え、バカじゃん!」
「バカじゃねぇ、誰でもやるし!」
「へぇ〜、……」
「おい、へぇ〜って言いながらトイレに行くな!」
「飲み物取りに行って来るだけだよ〜」
「今かよ、タイミング悪ぃな!」
「ただいま〜、何の話ししてたっけ?」
「ってか、おめぇ飲み物は?」
「あっ、トイレ行ってたら忘れてた!」
「トイレ行ってんじゃん!」
「トイレぐらい行くよ〜、何それセクハラ?」
「ちげぇし、おめぇ飲み物取りに行くって言ってたじゃん!」
「なんかトイレの話になったら行きたくなったの!」
「ならいいけどよ」
「じゃあ、また行って来るね!」
「ちょ、おい!」
「何?」
「そっちトイレだぞ!」
「もう、なんかトイレの話になったら行きたくなったの!」
「ならいいけどよ、次は飲み物忘れんなよ!」
「ただいま〜、何の話ししてたっけ?」
「ゴミの話だし」
「あぁ、大金がどうとか!」
「それそれ!」
「それで?」
「あの大金はさ、ぜってぇヤクザ絡みなんだぜ」
「え、何でわかるの?」
「例えば、ヤクの闇取り引きがあるとするだろ」
「うんうん」
「で、金を運ぶ奴。仮にこいつをAさんとして、右手にゴミの入ったゴミ袋、左手に大金が入った鞄を持ってるわけよ」
「うんうん」
「で、ゴミ捨て場に間違えて金の入った方の鞄を捨てちゃうわけ」
「うんうん」
「で、Aさんはおかしぃな、おかしぃなって思いながらもそのまま取り引き場所に行っちゃうわけ」
「うんうん」
「電車に乗って、タクシーに乗って」
「うんうん」
「で、タクシーの運転手がバックミラーでチラチラ、チラチラAさんのこと見るわけ」
「うんうん」
「で、運転手が言うわけだよ。お客さん、珍しいもの持ってますね? って」
「うんうん!」
「Aさんはドキッとしてゴミ袋をぎゅっと抱えて話を逸らすんだよ」
「いや〜、そんなことないっす! 今日は天気がいいですね」
「うんうん!」
「そうですね、お客さん。天気はいいですが、こうやって赤信号によく引っかかる日は良くないことが起こるんですよ」
「なにそれ〜!」
「で、そこで会話が終わってタクシー降りて取り引き場所に着くわけ」
「うんうん!」
「それも、今は使われてない廃倉庫!」
「うんうん!」
「で、取り引き現場にはすでに男が二人で待ってるわけ!」
「く、黒ずくめの男達!」
「ちげぇし! でAさんは右手に持ってるゴミ袋を相手に渡しちゃうわけ!」
「うんうん!」
「で、取り引き相手は金が揃ってるか袋の中を確認するわけ!」
「うんうん!」
「でも、おかしぃな、おかしぃな金が入ってねぇんだよ!」
「うんうん!」
「で、あるんだなこういうことって、袋の中からやっぱりゴミしか出ねぇわけ!」
「ということは!」
「ブツの代わりにゴミ渡して来たAさんはもう抹殺されるしかねぇわけ!」
「うん。そうなるね!」
「おいお前さん、約束の金はどうした? わしらのこと騙したのか?」
「やばいね!」
「怖いよ〜! 怖いよ〜! 助けて、助けてってAさんは言うわけだ!」
「やだ〜!」
「うわぁー! 向こうの白装束のやつがどんどん、どんどん近づいてくるわけ!」
「こわいよ〜! なんで白装束なの?」
「どんどん近づいて来て、長い髪で隠れてた顔がパッと出ると伊野尾理枝に似てるわけ!」
「よくわかんないけど、こわい〜!」
「……。もう首を絞められて声がでないAさん。そのままAさんは帰らぬ人になるわけ……」
「え、死んじゃうの?」
「で、結局ゴミ捨て場の金は持ち主が死んでるから誰も自分の金だって名乗り出ねぇわけ」
「なるほどね〜、だから公ちゃんはたまにゴミ漁ってるんだね!」
「ちげえし!」
「もう、図星なんだから〜!」
「まぁ、そういうことだからゴミ捨て場の金は拾っても自分の物にはするなってことだよ」
「え、今の話矛盾しない? 持ち主いないならもらっても平気じゃない?」
「おめぇ、死んだ奴の念がこもった金怖くねぇの?」
「怖いからいらない! てかこれ怖い話でしょ! もうトイレ行けない〜!」
「大丈夫だろ、さっき2回も行ってんじゃん」
「あっ、そうだった!」
『トッピングカップル 3.53』