「あっ、あれベースでしょ!」
「残念! ギターでした!」
「やだ~、公ちゃん! ギター侍のネタとか恥ずかしくて今じゃ誰も言わないよ!」
「ちげぇし! そのまんまベースじゃなくてギターってことだよ!」
「え、だってあれ茶色じゃん!」
「確かにあれはチェロみたいな木の質感を再現したフォルムだけど、よく見ると弦が6本あるだろ!」
「あ、本当だ~! だまされた~!」
「もっとちゃんと全体を見ろよな!」
「でも、これは台所にカブトムシのメスがいたら反射的に叩き潰しちゃうのと一緒だからね~」
「言い訳すんなよな。てか、そんなこと起こるわけねぇだろ!」
「起こるよ~。沙羅魅が兄上の脱走したカブトムシ潰したらめちゃくちゃ怒られたもん!」
「あ~、それは怒るかもな!」
「違うの、実際に起こったの!」
「いやいや、怒るのはその人の性格にもよるだろって話だろ?」
「性格関係ないよ。虫嫌いなら当然起こることなの!」
「いやいや、虫が好きだから怒ったわけだろ?」
「え、なんで好きなの? 好きだったら捕まえるから!」
「だから、捕まえたやつを潰したんだろ?」
「ちがうの。捕まえないで潰したの!」
「は? 買ってきたやつを潰したってことか?」
「え? どゆこと? 公ちゃん大丈夫?」
「おめぇこそ大丈夫かよ? 話噛み合ってねぇぞ!」
「本当! もう読者もきっとなんもわかんないよ!」
「そだな!」
「でも、あの時は本当に怖かったよ!」
「わかるわ~、オレも虫だけは苦手だからな」
「え、虫なんか怖くないよ!」
「は? じゃあ、何が怖ぇんだよ?」
「兄上!」
「そっちかよ!」
「そっちじゃないの、あのお方なの!」
「あのお方かよ!」
「そだよ。あのお方キレたらそうとうヤバいよ!」
「もしかして、ボコボコにされたのか?」
「そんなこと兄上がするわけないじゃん!」
「へぇ、女には手を出さない主義なんだな!」
「え、手は上げないけど、手は出すよ!」
「別にそっちの意味じゃねぇし!」
「そっちってなに?」
「そっちはそっちだよ」
「そうそう。下から来るよね!」
「下からってなんだよ?」
「思いっきり突いて来るの!」
「そういう話はすんなよ!」
「え、なんで?!」
「兄妹だろ?」
「兄妹関係ないよ。キレたら襲われるから!」
「マ、マジかよ! ヤベェな!」
「マジだよ。腹パンヤバいよ! 悶絶するよ!」
「結局殴られんのかよ! 驚かすなよな!」
「え、そっちってなに?」
「腹パンな!」
「しかもね、その一発で気を失うぐらいマジだったからね!」
「あのお方は沙羅魅よりそんなにカブトムシ大事かよ?」
「そだよ、だってヘラクロスのメスだったって!」
「それたぶんヘラクレスな!」
「で、次の日から毎日血尿だったの!」
「うわ! それマジでヤバ過ぎだわ!」
「もちろん女の子の日じゃないんだよ!」
「そういう話はしなくていいし! てか、おめぇん家どうなってんだよ?」
「もちろんうちは実力が物を言う世界だよ!」
「知ってる通りだけど、恐ろしすぎだろ!」
「そだよ。虫なんか家族に比べたら無視できるレベルだよ!」
『トッピングカップル York』