沙羅魅を海に連れてって

投稿日:2019-06-25 更新日:

「公ちゃん〜。今年こそ海行こうよ〜」
「なんだよ、またかよ〜」
「だって、結局去年も夏の海に行かなかった〜」
「おめぇどうせ一人で海外の海行ってるだろ!」
「一人じゃないよ! 家族でだよ!」
「人数編成はどうでもいいし! どっかの海行ってるんだから行かなくてもいいってこと!」
「どうしてそんなに海行きたくないの〜?」
「夏の海って人多くて面倒じゃん」
「生きてる人なんか気にしなきゃいいよ〜。沙羅魅は蟹と戯れたいの〜」
「なんだよそれ、百人一首かよ!」
「万葉集だもん!」
「同じだろ!」
「ちょっと違うでしょ!」

「てか、それ啄木だろ!」
「啄木だよ!」
「なんだ、わかってんじゃん!」
「うん。わかるよ!」
「でも、海は行かねぇ!」
「行こうよ〜ね〜」
「蟹なんてどっかの河原で十分だし!」
「沙羅魅はズワイガニがいいの〜!」
「おい、それ潜る系じゃね?」
「そかも〜」
「潜るのなんてもっと無理だし!」
「え、なんで〜?」
「おめぇ、ズワイガニは深海にいるやつだろ?」
「そなの? さすが理系! なんでも知ってる!」
「深海なんて潜水艦で行くとこじゃん!」
「え、シンカリオンは?」
「深海でシンカリオンなんて乗らねぇだろ!」
「新幹線だもんね!」
「てか、シンカリオンどうやって乗るんだよ!」
「う〜ん」
「バンダイさんに頼むとか?」
「それ!」
「無理だろ!」
「無理なら期待させるようなこと言わないでよ〜」
「スマソ」
「う〜ん」
「……」
「うーん」
「おめぇ、それ啄木?」
「え、なんで?」
「じっと手を見てるからだし!」
「あっ、本当だ! たくぼってた!」
「やれやれ、かわいいやつだぜ!」
「えへへ〜♪」

 

今日の新しい言葉

たくぼる……じっと手を見て物思いにふけること。

 

『トッピングカップル 220』

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